創業60余年を数えるエドウインのフラッグシップモデルにしてデビュー30周年を迎えた505の製造過程を徹底解剖。優れた生産性や効率よりもあくまでデニム本来のあるべき姿にこだわり続ける匠の業に迫った。
昔ながらの シャトル織機を使ったセルビッジデニムを筆頭に、505には他のレギュラーモデルと比べてもより多くのこだわりと匠の業が詰まっている。たとえ非効率と言われようとも長年愛される本物を可能な限りリーズナブルに提供したいと願うEDWINプライドの粋でもある。
産地、繊維の長さや太さなど、それぞれ異なる特徴を持つ原綿をあえてブレンドし、ヴィンテージライクな奥行あるムラ感と美しい退色の妙味を生み出す。
デニムの基となる原綿たちは俵状に固めた状態で工場へと運ばれ、繊維の長さや太さだけでなく品種ごとに異なる色みを最適な比率でブレンドしていく。
不純物を取り除き、徐々に引き伸ばし撚りをかけて均一な太さの糸を紡ぎ出していく。ジーンズ1本を仕上げるには約1kgほどの綿が必要となる。
ロープ状に束ねた糸を、染料に浸しては引き上げるを繰り返す通称ロープ染色。空気によって酸化、発色するインディゴの特性を活かし考案された伝統技法のひとつだ。
還元させた染料が空気にふれ酸化することで青色に発色する。染料にくぐらせた回数、引き上げ時に空気に触れた時間の短長が色みの濃さを決定づける。
芯まで染まらない「芯白」の糸こそ、ロープ染色の最たる特徴にしてアドバンテージ。表面が薄っすら削れ芯が露わになることでデニム特有の退色感が生まれる。
ヴィンテージ直系のセルビッジデニムは旧式シャトル織機によって生み出される。ゆっくり丁寧にシャトルを往復させながら織ることで表情豊かなデニム地が完成する。
ボビンに巻き付けた緯糸を左右に往復させながら経糸へと打ち込んでいく。
独特な凹凸感とほつれ止めとして脇に残るセルビッジがシャトル織機仕様の証となる。
豊田自動織機社製「G9」を採用。24時間フル稼働でも1台につき120mほどしか織ることができないものの、現行織機で再現できない風合いが何よりの魅力だ。
1枚の生地からプロダクトへと生まれ変わるスタートラインでは、徹底した無駄の排除やミリ単位での緻密な縫製には匠の業が不可欠となる。
長さ25メートルのデニム地を30回折り込み、計60枚の生地を型紙に合わせ一気に裁断。わずかなズレや撓みにも妥協を許さない経験と正確性が求められる。
通常はロックミシンで処理する内側の縫製部も、昔ながらの折り伏せ縫いで丁寧な仕上げに。そのこだわりは効率よりもクオリティに重きを置く505ならでは。
ジーンズ独自の魅力でもあるエイジングも最新テクノロジーと熟練の手作業により忠実に再現した。穿き込んだあの風合いを即戦力でお楽しみいただきたい。
まずはデジタル処理されたデータをベースにレーザー照射し、本来なら穿き込むことで生まれるヒゲやハチノスといった独自の表情を表面に焼きつける。
ヴィンテージと遜色ない自然な風合いへと馴染ませるシェービング加工。なるべく均等な品質を担保するため手作業による緻密なテクニックが求められる。
洗うと縮むというデニムの性質上、縮率まで緻密に計算され尽くした加工行程の最終段階。長年の勘と経験を頼りに思惑通りの風合いへと仕上げていく。
エイジング&色調整の最終段階。100から150本ほどのジーンズを専用の大型ワッシャーを用いて一気に洗い上げ、全体的な退色感を均等に馴らしていく。
ここまでの行程を経て、さらに厳格な品質検査をクリアしたあかつきには、晴れてプロダクトの顔となるペーパーフラッシャーが縫い付けられる。
505シリーズなら春夏だって
時代感を踏襲したスタイリングを楽しめる。
40'sから60'sモチーフまで各モデルの詳細と象徴的な
意匠を活かしたスタイルサンプルをお届けしよう。
'40年代をイメージしたパイプドステムとも呼ばれるワイドストレートには、ロールアップにレザーシューズといったクラシカルなワークスタイルが好相性。トップスにも微かに残るビスポーク由来のディテールワークやユニフォームとしての上品さを巧みに取り入れ、無骨な中にもどことなく品格ある大人ワークを意識したい。
単一番手の縫製糸や細かなミシンピッチなど、物資統制の敷かれた当時の時代背景を踏襲しつつ、よりユーザーフレンドリーに進化した極太ストレートフィット
ワークからデイリーユースへと時代のニーズに合わせて進化した'50年代のストレートモデルをイメージ。レザーシューズやバルカナイズスニーカー、ボックスシャツやパックTなど、時代感やトレンドに左右されることのない定番アイテムとの相性が良く、シンプルながらも細部で魅せる技ありスタイリングに最適な1本と言えるだろう。
ニーズの拡大からやや細めのフィッティングへと進化したことで、ヒゲやハチノスといったヴィンテージデニム特有の経年変化を生み出したルーズストレート
デニム特有の粗野で無骨なイメージが徐々に払拭され、ファッションアイテムとして需要が高まった'60年代のテーパードストレートを再現。アイビーやプレッピーなど東海岸ユースのスタイルに倣い、コインローファーや洗いざらしのB.D.シャツなどトラッド由来の上品さを活かしつつ、美麗デニムでカジュアルダウンを狙いたい。
複数の番手を使用し、ファッション的解釈が浸透した量産デニムの完成型を見事に再現。股上も短めに再設定することでより洗練されたイメージへと昇華された
2本のフロントプリーツとやや長めのフラップポケットを左右シンメトリーに配した'50年代のショートジャケットがベースとなっている
通称トラッカージャケットとも呼ばれ、その後に続くデニムジャケットのテンプレートともなった60'sヴィンテージがイメージソース
主にカウボーイや港湾労働者にシェアを広げ、セットアップでの着用も視野に進化を続けたデニムジャケット。フロントプリーツ仕様からポケットフラップと連動したV型デザインへ変遷を遂げる時代のアイコン2モデルを徹底再現した。
505 30th Anniversary Model
Price ¥38,500(税込)
当時主流だったサスペンダーに代わり、新たなアジャスト機能として'40年代以前にわずか数年のみ採用された通称シンチバック
ウエストヨークと左右身頃の縫製部が巻き縫いかつ右高となる仕様は、'20~'40年代にかけて稀に見られたレアディテールだ
革ラベルには、捨てられてしまう獣資源を有効活用したチバレザー(シカ)を使用。
ゼロから育てて欲しいという思いを込め、生地の整理加工をあえて施さない昔ながらの生機織りデニムを採用した
前開きはアタリの出やすいオープンボタン仕様。先述の隠しリベットと同様の理由からクロッチリベットで強度を担保している
フロントトップボタンの裏面の刻印も30thアニバーサリーモデル限定の特別仕様。見えない部分にも遊び心をしっかり持たせた
ヒップポケットの両脇補強には、ミシン針の強度を含め縫製技術が未熟だった時代の象徴でもある通称隠しリベットを忍ばせた
ポケット内袋となるスレーキでは、物資統制が敷かれた時代の通称大戦モデルに採用された既製のオリーブヘリンボーンをイメージ
各年代にインスパイアされた
3種類のシルエットがラインナップ。
着こなしの気分に合わせて、好みの1本を選ぼう。